留学生たちにはきっかけが必要。

ちえみさん(日本)

オーストラリアのホームステイ先で初めて知った日本語クラス

  小学校の時から海外に興味があり、何か外国語を学びたかったんです。小学4,5年生の時に英語塾に通い始めていました。きっかけは、祖母だと思います。祖母は満州で生まれた父とともに日本に引き揚げてきました。祖母が中国や中国語を教えてくれたんですが、私はそれをノートにしっかり書いていて、それが他の外国語、一番広まっていた英語への興味へとつながったのではないかと思います。子供のころは地元で外国からの人と交流することはあまりなかったのですが、高2の時に、いとこを頼ってシドニーでホームステイをしました。現地の高校に2週間通ったのですが、そこでの経験が衝撃的で、日本語教師の道を歩むきっかけになりました。

 シドニーでの高校の日本語のクラスを見て、「日本語を外国語として勉強している人がいるんだ」ということに初めて気がついたんです。その日本語クラスに自分の世話人(高校の生徒で自分の世話をしてくれた人)もいたんですが、見た目が白人の彼らが日本語が分かるんだということに衝撃を受けましたし、自分が知っている言語を教えることができるんだということにも衝撃を受けました。

 日本語を母語としていない人とのスムースなコミュニケーションをするために、相手が言っていることを誤解しないで理解しようと配慮をすることが必要だと思います。若い日本人学生たちは、留学生たちと関わりを持つ時、接し方が分からない、知らないという人が多いです。留学生との協働授業でそういうことに気がつくようです。そういう配慮する心を子供ころから持てるようにすれば、徐々にできるようになるのではないかと思います。

 アメリカ生活で一番大変だったのは、パーティーなどでスモールトークをすることでした。その場で、どのようにコミュニケーションを始めるのかが難しかったんです。例えば、どう話しかけたらいいのか、その後、どう話を続けたらいいのかなどがわかりませんでした。たぶん文化的なこともあって、終わるタイミングも分からなかったですね。相手が外国人であるという配慮ができる人やできない人など、色々いて、それによって関係がうまく行ったり行かなかったりしたと思います。

日本に留学しても日本人と接点がない学生たち

 アメリカの大学院で博士課程取得後、日本に戻り、大学で留学生の日本語教育を担当しています。日本ではあまり英語を使う機会はありません。

日本語を母語としていない人とのスムースなコミュニケーションをするために、相手が言っていることを誤解しないで理解しようと配慮をすることが必要だと思います。若い日本人学生たちは、留学生たちと関わりを持つ時、接し方が分からない、知らないという人が多いです。留学生との協働授業でそういうことに気がつくようです。そういう配慮する心を子供ころから持てるようにすれば、徐々にできるようになるのではないかと思います。

 留学生たちが困っていることとしてよく言われているのは、こんなに日本人がいるのに、日本人と接するチャンスがないということです。当校は10人に1人は留学生なんですが、日本人と接点がないまま帰国する留学生もいるんです。その状態は今も変わっていない。それを改善するために、協働授業をどんどん授業をするようにしていますが、クラブとか一つのきっかけ作りが大切になりますね。