自分から踏み出さないといけない。

アイドウさん(中国)

出身は中国新疆ウイグル自治区のウルムチですが、生まれたのはカザフスタンとの国境近くの町です。家では中国語とウイグル語で話しましたが、学校は小学校から大学まで全て中国語でした。中国では民族で分けて教育を受けるのが普通で、学校には漢民族とウイグル人のクラスがありました。私は漢民族のクラスに入りました。ウイグル人は私一人でした。だから、漢民族の友達もたくさんいました。

日本に来たのは2016年です。最初の1年は日本語だけを勉強しました。日本に来る前に2ヶ月ぐらい日本語を勉強しましたが、来たときは何もできなかったです。頼る人もいなくて、困った。周りの人が何を考えて、何を喋っているのか、怖いじゃないですか。不安で。何もわからないから。

今は、日本語は全然問題ないとは言えないですが、日常会話では問題ないと思います。市役所に電話したりとか。自信を持って話すことができます。でも、最初は自信がないので、緊張すると思います。大切なのは穏やかに話すことだと思います。

日本人の話がわからないときは不安でした。

全然私の日本語が足りないと思ったのは日本に来て、コンビニに入ったときです。大学の最初のオリエンテーションでも何を話しているかわからなかったです。単語が一つ、二つぐらいわかりました。そのときは、全然日本語が足りないという不安が生じました。空港を降りたときの「お疲れ様でした」はわかったけど、その後は全然…。中国で日本語を教えてくれた先生の話すスピードと全然違う。

 コンビニやスーパーで会計をするとき、店員さんの話が全然わからなくて、自分の後ろに行列ができているときは緊張したりしましたね。店員さんも待ってくれないし。それはプレッシャーでした。結局、店員さんは、この人はわからないと思って、諦めました。でも、たぶん困るのは日本語がわからない人だけじゃないと思います。

英語しか話さない人は生活範囲が狭いと思う。

 新しいこと、知らないことを見たい、自分の視野を広げたいと思い、日本では積極的に日本人と話すようにしています。大学の時も、ウイグルから出て西安の大学に行ったので、色々なところから集まってきた学生と話すようにしました。文化って国によって違うじゃないですか。例えば、日本では、物事をものすごく詳しく言っておかないといけない。また、中国ではお金のことを気にしすぎる。日本語だけじゃなくて、そんな違いとかを知ることができると思います。

 日本で日本語が喋れなかったら?そんな人も確かにいます。全然日本語を勉強せずに日本に来て、英語だけ話している人がいます。もし日本語が話せたら、自分の世界が広がると思います。日本のどこに行っても困らないし、人とコミュニケーションもできる。銀行、郵便局、病院…日本はどこに行っても日本語が必要じゃないですか。

確かに悪口を言ったり、裏切りする人もいます。

外国人だから相手にされなかったり、信頼されなかったり、話してもらえないこともあります。でも、それはどこに行っても同じじゃないですか。ほんのわずかな人はそんなことをする。人間って、そうじゃないですか。子どものときは「民族」という考え方はなかったんですが、大人になって言語や民族に対する考え方に「壁」ができるんです。

日本でも、みんながみんなじゃないと思いますけど、外国人を仲間にしないという民族性があるかもしれません。それにしても、私から踏み出してコミュニケーションをしないといけないと思います。