活動の概要 |
本学では、各学部の日本語教育課程の一環として、実習を主とした「日本語教授法」を履修することができ、2年次以上の学生が履修可能となっている。(日本語教育課程を履修していない学生でも履修可能。)2019年度秋学期に担当したこのコースで、学期末のレポートとして学生に「セカイの日本語―みんなの声―」を視聴し、それをもとにレポートを提出してもらった。 |
目標 |
多文化共生が叫ばれるこれからの時代に日本語教育に携わることになる学生たちに、様々な学習者・日本語話者がいることを理解し、自身の日本語指導にどう生かすかを考え、自分の意見をまとめてもらった。一般企業等に就職を希望する学生も履修していたため、そのような学生には、このビデオを視聴して気づいたことをどのように仕事の現場に生かしていけるかを考えてもらう機会とした。 |
対象 |
外国語学部(英米語学科・スペイン語学科)、英語キャリア学部、英語国際学部の2年次以上の学生(24名) |
時間(数) |
レポートの趣旨を説明(15分)し、各自でレポート作成 |
準備物 |
特になし |
活動の流れ |
活動の内容 |
留意した点 |
本活動の目的とともに、「セカイの日本語」のURL、レポートの期日などの説明をまとめたプリントを配布し、レポート提出の指示を出した。 |
突然「セカイの日本語」と言ってもイメージがつかない学生が多いと考え、プリント配布時に、様々な使用者によって国や地域で話されている英語を例に「セカイの日本語」のイメージを膨らませてもらった。
レポート作成の指示としては、まず「世界の日本語」と聞いてどんなことを考えるのかを書いてもらい、その後にビデオの視聴、そしてそこから感じたこと、気がついたことなどをどのように指導や仕事の現場に反映させていくのかを順をおって書いてもらった。 |
各自レポート作成・提出 |
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振り返り
学生の反応や教員の印象、効果等
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1.学生コメント例(抜粋・わかりやすいように文末や表現を少々変えています)
World Japaneseとは?
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- 日本語は日本人が使うための言語というイメージあるため、日本と何かしら関わりを持つ人が学習するのが日本語。もしくは日本に限らず様々な場所で直接、またはSNS等を通して日本人や様々な現地の人が教え合うような日本語を考える。
- 日本語は主に日本語で使われる
- 世界で使われている言語というイメージはない
- Anime, Sumou, Sushi, Tempura, Yakitori等
- 日本語を日本語で捉えようとする取り組み
- もったいない、おもてなし(世界の人々が知っていて用いられている言葉であり、日本人のこころや特徴、繊細さが表れている特別な言葉だと考えます)
- 海外で外来語としてそのまま使用されている日本語
- 学習者の母国語の文化的影響を受けた日本語表現を指しているのではないかと考えました。「世界の」という言葉を「様々な」という意味で捉えたからです。
- 日本以外の国で日本語を学んでいる人や日本語を使用している
- 日本語を学習している、母語が異なる人同士が意思疎通のために使う日本語のこと
気がついたこと・指導や仕事の現場でどう反映させるか
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- 母国や母語、母国語などの枠組みにおさまらない多様なルーツを持った人々がより増加する時代になり、自分のアイデンティティに関して悩む人も増えるだろうと思った。
- 帰国子女の年下の女の子が転入してきた時に、好奇心で「英語話して!」と声をかけたことを思い出しました。
- 多様性を理解できる教師になりたい。
- 学習サポートする上で、細かく習熟度やレベルを把握しその人にあった適切な対応が大切だと改めて気づけました。
- 様々なバックグラウンドで育った学習者がいることを前提に、自身の伝えたいことが伝わるようにすることが、重要であると考えています。
- 英語で話しかけたり、日本文化をよく知っていると褒めたりすることが人によっては、傷つけたり不快な気持ちにしているのかもしれないということに気づくことができた。
- 多様性を受け入れることができるクラスづくりをしていきたいです。
2.教員の印象、効果等(反省も含めています)
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- 当初の予定としては、「世界の日本語」について講義をし、その後ビデオ視聴、そしてディスカッションによる意見交換という流れで理解を深めていってもらおうと思っていたが、様々な理由で最終的には各自でビデオを視聴し、レポートを作成してもらうという流れになった。レポートを見ると、分析のレベルに違いは見られるものの、自分の経験などに照らし合わせて自身の固定観念や今までの行動や経験を振り返る様子が見られた。これからどのような行動の変容が見られるのか、今後このクラスの履修者と話す機会があれば聞いてみたい。
- ビデオの視聴については、クラスで見せるには時間が限られているので、各自都合のいい時間にしっかりビデオを見てもらえたことはよかったのかもしれない。
- 本学の学生はほとんどが留学や国際交流を希望して進学してくる学生がほとんどだが、実際には非日本語母語話者とのコミュニケーションに戸惑っている学生が多いのも確かである。また、日本語教師を希望する学生たちでも、日本語学習者を自分のイメージに当てはめて模擬授業を設計することが多く、今回のビデオの視聴で様々な学習者の言語的・文化的背景や学習観があるとわかったことは、学生にとって有意義だったのではないかと考える。
- 反省点としては、担当教員である報告者から何もインプットをしなかったことである。予期せぬ事情で授業予定に変更が生じたことが理由であったが、次回はやはりこのテーマについて多少こちらから情報を提供した方がいいのではないかと考える。しかしその一方で、学生が自分で考えて出した答えがレポートにそのまま反映されたことはよかったのではないかと思う。次回にこの単元をする際には、まず同じようなレポートを書いてもらい、その後に講義、そしてディスカッションへとつなげていく方法で進めてみたい。
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